盗撮について規制する法令
盗撮は、刑法には規定されておらず、主に以下の3つの法令で規制されています。
①各都道府県の迷惑防止条例
福岡県迷惑行為防止条例では、簡単に言うと、「公共の場所で、他人の身体や下着を撮影する行為」を、盗撮として取り締まっています。
ここで注意が必要なのは、実際に撮影する行為だけではなく、写真機等を設置し、または他人の身体に向ける行為も、盗撮行為として規制されているという点です。
②軽犯罪法
軽犯罪法においても、盗撮とはどのような行為かが定義されています。各都道府県の迷惑行為防止条例違反に該当しない場合は、軽犯罪法違反に該当するか否かが問題になります。
(引用)軽犯罪法1条23号
左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。
二十三 正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
つまり、「人の住居、浴場、更衣場、便所、その他人が通常衣服を着けないでいるような場所」において、写真を撮影したような場合には、軽犯罪法違反になります。
迷惑行為防止条例が、「公共の場所」での行為を規制しているのに対し、軽犯罪法は、「公共の場所」ではない場所を規制の対象にしています。
③児童ポルノ規制法
さらに、児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)においても、盗撮がどのような行為かが定義されています。
関連するのは、児童ポルノ禁止法第2条と第7条です。簡単にいえば、18歳に満たない者の裸体を撮影するような行為を、盗撮として定義しています。
各法令における罰金刑
以上のとおり、盗撮は主に3つの法令で規制されていますが、各法令では、どのような罰則が規定されているのでしょうか?
①各都道府県の迷惑行為防止条例
福岡県迷惑行為防止条例では、盗撮を行った場合の罰則は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定されています。
すなわち、公共の場所で、他人の身体や下着を撮影し、罰金を支払う場合には、50万円以下の罰金を支払う必要があります。
なお、常習として盗撮を行った場合には、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされており、常習でない場合と比べて、刑が重くなります。盗撮を繰り返し、複数前科がある場合などには、常習となる可能性が高くなると考えられます。
②軽犯罪法違反
軽犯罪法では、盗撮を行った場合の罰則は、「拘留または科料」とされています。
「拘留」とは、1日以上30日未満という期間での身柄拘束をいい、「科料」とは、1000円以上1万円未満の金銭徴収をいいます。
いずれも迷惑防止条例違反と比較したら軽い刑罰ではありますが、拘留の場合は30日未満という身柄拘束を受ける場合もありますので、非常に大きな影響が生じると考えられます。
③児童ポルノ規制法
児童ポルノ規制法に違反する盗撮を行った場合の罰則は、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」とされています。
主な法令のうち、最も重い刑罰が規定されています。
盗撮における罰金の相場はいくらか?
各法令には、罰金もあれば科料もあり、罰金の上限額も異なります。したがって、盗撮事件すべてについて罰金の相場を算出するのは困難であると考えられます。
もっとも、①各都道府県の迷惑行為防止条例に違反した場合の罰金は、20万円~30万円程度が多いと思われます。
さいごに
盗撮における罰金について解説しました。盗撮事件においては、被害者と示談ができた場合には、不起訴になるケースもありますので、お早めに弁護士に相談されることをおすすめいたします。